東京高等裁判所 昭和51年(行ケ)144号 判決
事実及び理由
一 請求の原因第一項から第三項までの事実は、当事者間に争いがない。
二 そこで、審決取消事由の有無について判断する。
本願考案が、レコード交換装置において、ターンテーブルの中心軸線をレコードマガジンの中心軸線と実質的に平行にするという構成をとつたことにより、その装置全体の垂直方向の寸法を小さくし、ひいてはアンプ、スピーカー等の付加的機構に適当な空間をケーシングやハウジングに設けるという効果をもたらすものであることは、当事者間に争いがない。
そこで、この効果が顕著なものといえるかどうかについて検討する。
まず、装置全体の垂直方向の寸法を小さくするという効果についてみると、第一引用例の記載内容、本願考案と第一引用例との一致点と相違点が審決認定のとおりであることは当事者間に争いがなく、また第二引用例には審決認定のような記載がなされていることも当事者間に争いがないので、成立に争いのない甲第三号証(第一引用例)と同じく成立に争いのない甲第四号証(第二引用例、とくに第一図)をあわせ考えれば、第一引用例に第二引用例を転用して本願考案のような構成をとれば装置の幅方向の寸法が第一引用例所載のものに比してほぼレコードマガジンの直径とレコードの直径の差だけ大きくなる反面、垂直方向の寸法はその分だけ小さくなることは見易い道理であり、このような効果は、両引用例から予測可能な効果であるということができる。
また、本願考案はアンプ、スピーカー等の付加的機構に適当な空間をケーシングやハウジングに設けうるという効果をもたらすことも当事者間に争いがないことは前記のとおりであるが、この効果は装置の垂直方向の寸法が小さくなるという本願考案の主たる効果に随伴して生ずる副次的効果に過ぎず(原本の存在と成立に争いない甲第二号証の一によれば、本願明細書にこの効果についての記載はないことが認められる。)、前記のとおり主たる効果が第一、第二両引用例から予測できるものである以上、この副次的効果も当然予測できる筈である。
したがつて、原告主張の効果は、いずれも顕著なものとはいい難い。
そうであるとすれば、本願考案は両引用例からきわめて容易に考案できるとした審決に原告主張のような違法があるとはいえないことになる。
三 よつて、原告の本訴請求は失当である。
〔編註〕本願考案の要旨は左のとおりである。
基部と複数のレコードを保持するよう前記基部上に装着されたほぼ円形のレコードマガジンと、前記基部上に装着されたターンテーブルと、選択したレコードを前記レコードマガジンから前記基部に移動させるよう該基部上に装置されたレコード移送手段とよりなるレコード交換装置において、ターンテーブルの中心軸線はレコードマガジンの中心軸線と実質的に平行であり、レコード移送手段は前記レコードマガジンと前記ターンテーブルとの間においてレコードを実質的に九〇度傾斜させるための手段を包含していることを特徴とするレコード交換装置